「大変恐縮ですが」や「お忙しいところ恐縮ですが」など、ビジネスシーンでよく用いられる「恐縮」という言葉ですが、正しく意味を理解して使えているでしょうか。
そこで、「恐縮」の意味と使うのに適した場面、「大変恐縮ですが」「お忙しいところ恐縮ですが」以外の表現方法などについて見ていきましょう。
「恐縮」の意味の変化
「恐縮(きょうしゅく)」とは、「恐れる」と「縮む」という字から成るように、本来は「身も縮むほどに恐れること」を意味します。
「恐ろしさのあまり身が縮む」という時に「恐縮する」のように使われていた言葉ですが、今ではこの意味で用いられることはほとんどありません。
本来の意味から「身が縮むほどに恐れ入る」に変化し、そこから、誰かから厚意を受けた時などで、それを自分にはもったいないと感じ申し訳なく思うさまを表すようになりました。
「恐縮」を用いる場面
「相手の厚意に対して自分にはもったいないとばかりに恐れ入る」ことが「恐縮」の意味ですので、感謝の念を表す時に用いられます。
「ありがとう」の意味で「恐縮です」と言えば、相手の厚意に対して非常に感謝しているということです。
「お心がけ誠にありがとうございます。恐縮です」のように、お礼の後に付け加える使い方もできます。
また、ビジネスシーンでなら、わざわざ自社を訪問してもらった相手に、「お忙しいところわざわざお越しいただき、大変恐縮です」などと使えます。
また、感謝以外では相手にお願いや依頼をする時などにも使用可能です。
「お忙しいところ恐縮ですが」と前置きしてから依頼を切り出すと、「こんな依頼をして迷惑なことはわかっており、たいへん申し訳ないが」というニュアンスが出ます。
もっと軽く「失礼ですが」や「すみませんが」の代わりとして、話しかける際に「恐縮ですが」とするのもよくある使い方です。
メールや電話での使い方
「恐縮」は話し言葉だけでなく手紙やメールでも使えます。
ビジネスにおいて用件を伝えるメールなどは、簡潔に用件を伝えることを主眼とするため、長々と時候の挨拶などを述べるなどは通常しません。
軽い挨拶の後にすぐ結論を述べるのがメールの目的を伝えるのに効果的です。
ただ、用件だけで終わってはあまりに素っ気ないので、依頼文などでは末尾に「お忙しいところ恐縮ですがご対応よろしくお願いいたします」などとします。
電話で用いる場合は、冒頭に「お忙しいところ恐縮です。○○会社の××と申します」とすることも、電話を切る間際に「お忙しいところ恐縮です。では、失礼いたします」と結ぶことも可能です。
「お忙しいところ恐縮ですが」は多用に注意
このように「恐縮」はいろんな場面で使える便利な表現なのですが、あまり多用するとわざとらしくなってかえって失礼な印象を与えることにもなりかねません。謙遜の言葉も使いすぎると無礼になりますから、ポイントを絞って使うようにしましょう。
また、「恐縮」という言葉の前置きとして「お忙しいところ」や「お忙しいなか」という表現がよく用いらますが、「忙しい」という言葉に対してあまりこころよく思わない人もいることに注意しましょう。
「心」を「亡」くすと書いて「忙」のため、縁起を担ぐ人はこの言葉自体を敬遠する傾向にあります。
ビジネスではそれほど気にする必要はありませんが、「恐縮」という言葉ともどもあまり多用しない方が無難でしょう。
「忙しい」という言葉を避けるなら「大変恐縮ですが」でもかまいませんし、「恐縮」に代えて「大変お手数ですが」なども相手に手間を取らせる依頼には有効です。
まとめ
ビジネスでは「大変恐縮ですが」や「お忙しいところ恐縮ですが」は決まり文句のように使われていますが、ちゃんとその意味を考えて使うことが大切です。
便利な表現ですので、使いどころをしっかりマスターしておきましょう。