敬語・言葉

「幸甚」とはどのような意味で用いられる言葉なのか

お辞儀する男性

ビジネスでは日常会話では使わない言葉にも出会います。

「幸甚」もそんな言葉の一つではないでしょうか。

文章等で使用されることの多いこの言葉について、その意味と使う際の注意、言い換えできる他の表現などについて見ていきます。

「甚だしく幸せ」という意味

「幸甚(こうじん)」とは、読んで字のごとく「甚だしく幸せなこと」を意味します。

単に幸せというよりも、幸せという言葉では足りないほどの幸福な状態を表す言葉です。

「幸甚」の「甚」という漢字には、「はなはだしい」「ひどい」「度が過ぎている」などの意味があり、「非常に」や「ひどく」など程度を強調する役目も果たします。

程度の非常に大きいことを表す「甚大」、気持ちが非常に深いことを表す「深甚」などからもわかるように、「甚」を「幸」に付けることで、通常の度合いを超えるほどの幸福な状態を表すことになります。

とても硬い表現

具体的な使い方には、「幸甚です」「幸甚に存じます」「幸甚の至りです」などがあります。

いずれも平たく言えば「とても幸せです」という意味です。

ビジネスシーンにおいて通常の程度を超えるような甚だしく幸せを感じる時などあるのかという疑問もありますが、実際には意外とよく用いられます。

それだけ自分の喜びを強調することによって、この言葉を発する相手に対して敬意を表すことができるからです。

たとえば、何かを贈る場合などに「お納めくだされば幸甚の至りに存じます」などと使います。

ご覧のようにいかにも堅苦しい表現ですので、ビジネスシーンでも会話ではそれほど用いられません。

正式な挨拶状など型を重んじる文章において威力を発揮する言葉と考えるとよいでしょう。

柔らかく言い換える場合

「幸甚の至りでございます」などとすれば最大限の丁寧な言い方ですが、だからといって多用するのは好ましくありません。

同僚や目下の人に使うのは明らかにおかしく聞こえますし、目上の人でも、日ごろから同じ職場で働く直属の上司に使用するのは大袈裟な印象を与えるでしょう。

会社なら社長や幹部などトップクラス、お客様ならお得意様など最大級の敬意を示すべき相手にここぞという場面で使いましょう。

少々無理なお願いをする時などに、「来週までにご連絡いただければ幸甚に存じます」などと使うのが良い例です。

会話やそこまで硬い文章でない場合は、「幸いです」「ありがたいです」「助かります」「よろしくお願い申し上げます」など別の表現を用いる方がよいでしょう。

必要な依頼はストレートにお願いする

単に自分の幸せな状態を表すというよりも、「〜してくれたら非常にうれしい」という意味合いで用いられることが多い表現です。

お願いごとをする時に便利な表現ですが、明確な依頼の際は別の表現を用いる方がよいでしょう。

「来週までにご確認いただければ幸甚です」とした場合、「都合が悪ければもっと遅くなってもいいんだな」と捉えられる可能性があるからです。

返信が必要なメールについても、この表現を使うことで「無理に返信する必要はないということだろう」と思われることがあります。

ですので、ぜひとも相手にお願いしたいことがある時には、「来週までにご連絡いただけるようよろしくお願い申し上げます」と要望をストレートに伝えるべきです。

「お願いいたします」「お願いしたく存じます」「お頼み申し上げます」など敬意を示す言い方はいくつもあるので、これらを上手に使い分け、一つの表現を多用し過ぎないよう気を付けてください。

まとめ

「幸甚」は、幸せという状態を表す表現のなかでも最高度合いの表現です。

言葉の響きも硬いので、あまり多用するべきではありません。

本当に最大限の敬意を示したい時に限って使用するとよいでしょう。

それ以外では、「幸いです」など別の表現で気持ちを表した方が好ましいことが多いです。

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