失念の意味
「失念しておりました」など、ビジネス社会ではよく聞く言い回しです。
では、どういうときに使っているのでしょう。
まず「失念」の意味としては「うっかり忘れてしまうこと」「記憶にあるはずのことを思い出せないこと」となっており、簡単にいうと「ど忘れ」ということになります。
失念の使い方
「失念」は「忘れる」の謙譲語であり、謙譲語は自分の動作に対してのみ、へりくだって言い表す敬語です。
主にビジネスシーンで使われます。業務の上での予定を忘れてしまった場合や、上司から頼まれていたことをうっかり忘れてしまっていた…という時に「失念」を使います。
つまり、うっかり忘れるというミスをしてしまった時に、謝罪の言葉に添えて使うことのできる言葉なのです。
「申し訳ありません。うっかり忘れておりました。」だと「うっかりってなんだよ、失礼だな」と相手が思ってしまうかもしれません。
それが「申し訳ありません。失念しておりました。」となるだけで「本当に忘れてしまったんだな」と反省の気持ちが伝わります。
加えて、そのミスを迅速にカバーするために、埋め合わせのお願いを同時進行ですることも大切です。
失念を使った例文
・上司から頼まれていた仕事をうっかり忘れていた場合
「申し訳ありません。○○課長に依頼されていた業務を失念しておりました。本日中に業務を完了させますので、もうしばらく待っていただけまませんでしょうか。」
・仕事で使うシステムにパスワード忘れで入れなくなってしまった場合
「新しく設定したパスワードを失念してしまい、システムに入れなくなってしまいました。お手数おかけしますが、パスワードのリセットの処理をお願いしたく存じます」
・ミーティングの予定を忘れてしまっていた場合
「本日9:00より行われたミーティングですが、日程変更になったことを失念しており出席できませんでした。申し訳ありませんでした。お手数だとは思いますが、ミーティングの内容を共有いただければと思います。」
実は間違っているかも?
・先方が失念された
失念は謙譲語なので、自分の動作に対してのみ用いることのできる言葉です。なのでこの場合は「先方がお忘れになられた」となります。
・会社に家の鍵を失念した
失念は自分が行った動作に対して使う言葉なので、物を忘れた場合には使うことができません。
・同封するはずの資料を失念してしまいました
「資料」という「物」をなくしてしまったという意味なのでこれも間違い。ただし、「資料を同封するのを失念してしまいました。」になると「同封する」ことを「忘れた」ということになるので正しい使い方と言えます。
「覚えていたはずのことを忘れてしまうこと」を「失念」というので、物をなくした場合や、もともと「知らなかった」場合には使いませんので気をつけましょう。
失念の類語は?
似たような意味の言葉には、記憶がなくなる・記憶が飛ぶ・記憶を失う・忘れる・忘失する・ど忘れする・頭から消える・シナプスがつながらない・うっかりするなどがあります。
全てに共通することは「もともと覚えていたはずのことを忘れてしまうこと」という意味であることです。
類語はこんなにたくさんあるのにどこか丁寧さに欠ける印象で、「失念」ほどビジネス向きの丁寧な言葉はありません。
まとめ
いかがでしたか?「失念ってよく聞くし、使うこともあるけれど間違った使い方をしていることがあったのかも…」と思った人もいるはずです。
きっとそれは「失念」が丁寧でビジネス向きである便利さから、気づいたら使っている…ということもあるからでしょう。
そんな便利な言葉だからこそ、正しいシーンで正しく使いたいです。
でも一番は、「失念」という言葉を使うようなミスをしないように気を付けたいものです。