習わしとなっている行事等について表現する時によく用いられる「慣行」「慣習」「慣例」という3つの言葉は、どれも同じような意味を持っています。
日常会話で厳密な違いを意識することは少ないため、正確に使い分けることができている人はそれほど多くないでしょう。
しかし、その意味を調べると3つの言葉にはそれぞれ独自の意味合いがあることがわかります。
「慣行」「慣習」「慣例」それぞれの意味
それでは、「慣行」「慣習」「慣例」のそれぞれの意味と違い、それ以外に言い換えられる言葉などについて見ていきましょう。
慣行の意味と使い方
「慣行(かんこう)」は、辞書的な意味では「昔からの習わしとして行われること」となります。
これだと昔ながらの地域行事などを指す言葉のように思えますが、ふだんから習慣として日常的に行うことについても「慣行」ということは可能です。
「行」の字があるように、実際に行うことに力点が置かれているのが特徴です。
使い方の例としては、「村の慣行に従って葬儀が執り行われる」や「わが社では毎年この時期に社員旅行に出かけるのが慣行となっている」などがあります。
「慣習」の意味と使い方
「慣習(かんしゅう)」も、慣行と同じく「昔からの習わし」という意味の言葉です。
おもに地域社会などでの伝統的な習わしを慣習と言いますが、慣行のように行為することではなく、習わしそのものを指しています。
具体的な使い方は、「祭りの夜は朝まで飲み明かすのが村の慣習だ」や「村の慣習が気に食わないなら出ていけ」などです。
「慣例」の意味と使い方
「慣例(かんれい)」とは、「繰り返されることで習慣として行われるようになったこと」といった意味の言葉です。
「慣例」の一語で「習わし」や「しきたり」と同義であり、この点では「慣行」よりも「慣習」に近いことがわかります。
ただ、社会に根付いた習わしではなくても、繰り返されることによって習慣化したことなら慣例と言えます。
使い方の例としては、「朝礼では順番に今日の目標を発表するのが慣例だ」や「毎年やっているうちにすっかり慣例行事になった」などです。
「慣行」「慣習」「慣例」の微妙な違いと使い分け
「地域社会に古くから根付く習わし」と言う時には、「慣習」という言葉がぴったりです。
そのコミュニティに属する人ならやるのが当然のことであり、拘束力がやや強めです。
一方、「慣例」には、伝統的な地域の習わしや皆が従うものというニュアンスは「慣習」ほど強くなく、個人の行為についても繰り返されることで習慣化したことなら慣例と呼びます。
「慣行」については、習わしやしきたりを指す場合もありますが、習わしとして実際に行うことに力点が置かれている感じです。
学校や会社の行事などについて用いられるのも、ただの習慣ではなく実際に行われる行事という意味合いが強いからでしょう。
とはいえ、3つの違いは微妙であり、「慣行」と言うべきところを「慣例」と言ったからといって間違いとは言い難いですが、微妙な意味合いの違いに合わせて3つの言葉を使い分けられると、日本語力が高い人だと評価されるでしょう。
「習慣」や「風習」という類語の意味
「習慣」も「風習」も、「慣習」と大差ありません。
特に「習慣」と「慣習」は漢字の順序を入れ替えただけですから、ほぼ同じと思っても間違いありません。
あえて違いを挙げるなら、慣習は社会における習わしであり、習慣は個人の習わしと言ったところでしょうか。
「風習」に関しては、個人ではなくある社会に伝わる習わしという意味ですので、対象の範囲が慣習より広い言葉と考えるとよいでしょう。
まとめ
3つとも非常によく似た意味を持つ言葉ですが、微妙に意味合いが異なるので厳密に使い分けたい場合には注意が必要です。
間違ったからといってマナー違反になるわけではありませんが、微妙な使い分けができるようになれば社会人としてプラスになるのは間違いないと言えるでしょう。