「ありがとう」に対する返事として「どういたしまして」という言葉がありますが、本来はどのような意味があるのでしょうか。
また、敬語として目上の人に使用するのに適切な言葉なのか?、ビジネスで使用するのにふさわしい言葉なのか?、そして、より丁寧な言い換え表現には何があるのか?、などについて見ていきます。
「どういたしまして」の意味
ひらがなで「どういたしまして」では、一見どんな意味の言葉なのかわかりにくいですが、漢字で「如何致しまして」と書くとイメージが掴みやすいのではないでしょうか。
「どう」とは、「どうする」「どうした」などの態様を表す言葉で、漢字で書くと「如何」、つまり「いかが」という意味です。
「いたしまして」とは、「する」の謙譲語である「致す」に丁寧語の「ます」という助動詞を付け、語尾に質問の「て」という終助詞を付けた形です。
質問の「て」とは、「なんだって?」と言う時の「て」で、反語の意味を含みます。
つまり、「どういたしまして」とは、「わたしがどんなことをしましたか?いえ、たいしたことはしていません」という意味と解釈可能です。
お礼に対して発する場合、「お礼されるほどのことはしていない」と謙遜の意が込められていることがわかります。
カジュアルな言い方をすれば、「たいしたことないよ」と礼には及ばないことを表したい時に使う表現です。
要は相手の謝意を否定する意味が込められる言葉ですので、相手の謝罪に対して「謝る必要はない」と言いたい時にも「どういたしまして」と使うこともできます。
「どういたしまして」はビジネスにふさわしい言葉か?
「どういたしまして」には、「致す」と「ます」という謙譲語と丁寧語が入っています。
そのため、目上の人に対して使用しても問題なさそうです。
しかし、ビジネスシーンではあまり適しているとは言えないでしょう。
気安い相手なら社内で立場が上の人にも使えますが、取引先の相手などそれほど親密でない相手には使うべきではありません。
なぜなら、この言葉には少し上から目線な感じがあるからです。
相手のお礼に対して「たいしたことない」と軽く否定していますが、「自分がやってやった」「自分のおかげ」というニュアンスも幾分感じ取られます。
そうでなくても、相手の感謝を否定するのはマナーとしてどうでしょうか。相手の謝意に応えるには、それを受け取ったうえで適切な言葉で返すことが大切です。
いずれにせよ、受け取り方によっては皮肉っぽくも聞こえるので、「どういたしまして」はビジネスではなるべく使用しない方が無難でしょう。
ビジネスにふさわしい「どういたしまして」の言い換え表現
「どういたしまして」を使わないとすると、相手にお礼を言われたときにどのような言葉で返せばよいでしょうか。
それほど深く考える必要はありません。相手の役に立ったことを素直に喜んでいる気持ちを示せば大丈夫です。
たとえば、「お役に立てて光栄です」や「喜んでいただけたなら幸いです」という表現なら、その気持ちが伝わりますし、どんなに目上の人に対して使っても問題ありません。
もっと役に立ちたいという意欲を示すのであれば、「いつでも遠慮なく申し付けください」という言い方でもよいでしょう。
謙遜の意を表したい場合は、「恐縮です」や「お気になさらないでください」などの言い方でもかまいません。
相手の謝意を否定するのではなく、自分が当然のことをしただけというニュアンスが伝わります。
まとめ
このように、「どういたしまして」という言葉はビジネスにおいてはあまり使うべき表現ではないことがわかりました。
よほど気安い相手や誤解の生じない自分をよく知る相手であれば大丈夫ですが、そうでない場合はなるべく別の表現を用いましょう。