敬語・言葉

「ご遠慮下さい」と「お控えください」の意味と使用上の注意

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何かをしてほしくないということを伝える表現として、「ご遠慮下さい」と「お控えください」という言い方があります。

たとえば、「室内での通話はご遠慮下さい」や「出入り口につき、この場所への駐車はお控えください」などは日常生活でもよく目にする文言です。

ビジネスシーンでも使用する場面はありますが、では、この二つの表現にはどのような違いがあるのでしょうか。類語表現と併せて詳しく見ていきます。

「遠慮」のもともとの意味と「ご遠慮下さい」の意味すること

「ご遠慮下さい」と「お控えください」の違いを明らかにするために、「遠慮」と「控える」という言葉の意味から見ていきましょう。

「遠慮」とは、もともとは「深謀遠慮」などと言う時の「将来のことを考慮して思いを巡らす」ことという意味でしたが、そこから転じて「言動を慎む」や「辞退する」という意味が生まれました。

「ご遠慮下さい」と言う時には、「やめてください」という思いがあることは明らかですから、もっぱら後者の意味になると考えてよいです。

「控える」の語義と「お控えください」における意味

「控える」という言葉の意味にはいろいろあって、「順番などに備えて待機する」「距離的・時間的に近くにある」という意味、「度を越さないよう分量などを少なめにする」「自制してやめておく」などという意味、さらに「行かせないよう引き留める」「忘れないよう書き留める」などといった意味があります。

今回のテーマでは2番目の意味です。

ただ、「お控えください」と言う時は、「分量を少なめにしてください」という意味ではなく、「自制のうえやめてください」と考えるべきでしょう。

「飲酒後の運転はお控えください」と言う時は、「運転するな」ということを言っているのであって、「ちょっとなら運転してもよい」という意味でないことからも明らかです。

ですので、他人に対して「お控えください」と言うと、「やめてください」と完全に否定している意味になります。

「ご遠慮下さい」には注意が必要

「ご遠慮下さい」も「お控えください」も「やめてほしい」という意味があることがわかりましたが、実は前者はマナー上使うべきではないとされています。

というのも、遠慮とは自分の言動を慎むことという意味であるため、他人に対して使うのはおかしいという意見があるからです。

フランクな会話では「少しは遠慮しろよ」などと他人に遠慮を強要することはありますが、「ご遠慮下さい」と言うと、相手を敬うと同時に相手に命令していることになり、敬語表現としてちぐはぐなことになってしまいます。

今では一般化した言い方ではありますが、このような理由で、言われた人のなかには失礼だと捉えることも考えられることです。

どちらかを使うのであれば、「お控えください」と言う方が無難でしょう。

やめてほしいことを伝える別の表現

相手にやめてほしいということを伝える敬語表現には、「ご遠慮下さい」と「お控えください」以外にもいろいろあります。

ストレートに断りたい時には「お断りいたします」がはっきりしていてわかりやすいですが、ビジネスシーンでは滅多なことで使う表現ではないでしょう。

もう少し柔らかく言いたいのであれば「ご容赦ください」がよいです。さらに遠回しに言うならば、たとえば「この場所に駐車しないでください」と言うことを伝えたい場合、「こちらは駐車禁止となっております。ご理解(ご承知)(ご了承)ください」などとする方法があります。

まとめ

「ご遠慮下さい」も「お控えください」も相手に断りを入れるための表現ですが、前者は失礼だと捉えられる恐れがあるため、この二つのうちからなら後者を選ぶ方が無難です。

なるべく柔らかく伝えたい場合は、「ご容赦ください」「ご理解ください」「ご了承ください」などさまざまな表現を上手に使い分けましょう。

白い犬(ご遠慮なく)
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