「ご清栄」「ご健勝」「ご多幸」などは手紙や挨拶状で頻繁に用いられる表現ですが、これ以外にも似たような意味の言葉はたくさんあります。
時候の挨拶における定型句として用いられることがほとんどなので、詳しい意味まで考えて使い分けできている人はあまり多くありません。
しかし、使い分けを誤ると失礼な印象を与えかねないので、しっかり意味を区別して適切に使えるようにしておきましょう。
「ご清栄」とは
「ご清栄」とは「清栄」という言葉に「ご」を付けて丁寧にした表現ですが、その意味は文字通り「清く栄える」ということを表します。
手紙では、相手の健康や繁栄に対して喜びを示すための挨拶語です。
「清」には「清らか」や「清々しい」という意味とともに、「穢れがない」という意味もあるため、人に対して用いると健康を表します。
「栄」は文字通り「栄える」という意味があるため、二つ合わせて「清栄」とすることで健康と繁栄を同時に表すことが可能です。
挨拶文では「ますますご清栄のことと喜び申し上げます」などのように、相手の健康と繁栄について喜びを表すために用いられます。
「ご健勝」とは
「ご健勝」とは「健勝」という言葉に丁寧語の「ご」を付けた言葉ですが、「健勝」とは健やかさや健康であることを意味する言葉です。
清栄と同じような意味がありますが、こちらは繁栄より健康を気遣うという意味が強くなります。
結婚式のスピーチなどお祝いの席ではスピーチとして話し言葉でも用いられますが、これもやはり文章語としての使用がほとんどです。
「○○様のご健勝とご活躍をお祈りいたします」などと使いますが、目上・目下に関係なく使えるものの、使える相手は個人のみであることに注意してください。
会社など組織に対しては使いません。
また、ケガや病気の最中の明らかに健康でない人に対して用いるのも適切ではありません。
入院中の人への挨拶文なら「お大事になさってください」などとする方が適切です。
健康状態がわからない相手に対しては、あえてこうした表現を用いず、時候の挨拶だけでもかまいません。

「ご多幸」とは
「ご多幸」も、上の二つと同じく「ご」を付けて「多幸」という言葉を丁寧にした表現です。
文字通り相手の幸せの多いことを願うために用いられます。
また、「清栄」と「健勝」は文章の冒頭で時候の挨拶に続いて用いられますが、「多幸」は結びの句として用いられるという特徴があります。
幸せを願うという意味ですので、目上・目下にかかわらず誰に対しても使用できます。結婚祝いの挨拶や、転職や転居などでの別れの挨拶などで使われることが多いです。
具体的な使用例を挙げると、「末筆ながら、皆様のご多幸をお祈り申し上げます」「お二人のご健康とご多幸を心からお祈りしております」などがあります。
類語も使って組み合わせ可能
「清栄」「健勝」「多幸」以外にも、「清栄」「清福」「壮健」「隆昌」なども同じように健康、幸福、繁栄を願う際に用いることが可能です。
「健勝」については、先にも触れたように個人に対してのみ使用可能で、会社などの挨拶には使えないことに注意したいですが、それ以外はいろいろ組み合わせてさまざまな言い回しが作れます。
会社に宛てた挨拶状なら「ご繁栄」「ご発展」「ご隆盛」などを願うとするのがよいでしょう。
また、「活躍」という日常語も「今後のご活躍をお祈りいたします」などのように使えます。
ただし、「ご活躍を期待しています」という表現は、相手の活躍を当てにしているという意味合いが出てしまうため、目上の人には使わない方がよいでしょう。
まとめ
これらの言葉は日常会話ではあまり使いませんが、挨拶状やビジネスメールでは頻繁に用いられます。
どれも似たような意味なので混同しやすいですが、意味の違いを理解して適切に使い分けられるようにしておきましょう。