私儀と書いてわたくしぎと読みます。日常生活で私儀という言葉を使用することはめったにありません。
ビジネスの場面で、挨拶文や委任状、退職届といった文書の中で「さて私儀」といった形で使われます。
この記事では、私儀とはどのような意味か?といった基本的なことから、その使い方・例文・類義語についてご紹介します。
私儀の読み方と意味
冒頭でご紹介した通り、読み方については「わたくしぎ」と読みます。「しぎ」とは読みませんので注意が必要です。
簡単に言ってしまうと「私のことですが…」という意味です。
自分のことについて話すにあたって、へりくだった(謙譲)表現になります。
イメージとしては「私個人のことをお話しさせてもらって恐縮ではありますが…」といったニュアンスがあります。
自分のことを卑下する、日本人の典型的な表現といえなくもありません。
英語ではこれに該当する、もしくは近い表現はないため、海外の方にはなかなか理解してもらえない言葉といえます。
自分のことを表現するにあたっての硬めの表現と思っていいでしょう。
私儀の使い方
この言葉は、日常会話の中で使用するよりはビジネス文書の中で使われる言葉といえます。
ビジネス文書で使用する際には、使い方について注意すべきことがあります。
①小さい文字にする
まずは、この言葉はほかの文字と比較して小さめにすることです。
先ほども紹介したようにへりくだって表現する言葉ですから、ほかの文字よりも小さくする必要があります。
特に縦書きの文章の際には小さく記載することが多いです。
②行末に記載する
使い方でもう一つ注意したいのは、行末に記載することです。
これもへりくだった表現ですから、下の方に記載することです。
この言葉を使用する行は、最初の部分はスペースを連打して空白にするように注意しましょう。
ちなみに完全に行末に持ってくるのではなく、こちらの言葉を使ったのちに1文字分くらいのスペースを空けるときれいなレイアウトになるでしょう。
使用例:退職願(縦書き・横書き)
実際の書き方の使用例として退職願(縦書きと横書き)の画像を参考にして下さい。
私儀の例文
自分のことについて紹介する際に使用する言葉ですから、何か報告がある場合に使用します。
私儀の手前に「さて」という言葉を伴って用いられることが通例となっています。
それでは具体的な例文をご紹介します。
- 結婚報告:
さて私儀、この度結婚いたしました。 - 転職報告:
さて私儀この度○○株式会社で勤務することになりました - 就任報告:
謹啓 陽春の侯、ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
さて、私儀、この度◯◯氏の後任といたしまして◯◯課長に就任いたしました。 - 休職願い:
さて私儀この度病気療養のため、◯月◯日より◯月◯日まで休職いたしたく、ここにお届けいたします。 - 退職願い:
さて私儀一身上の都合により○年○月○日をもって○○株式会社を退職いたします。 - 委任状:
私儀◯◯を代理人と定め、下記に関する一切の権限を委任いたします。
これらの文章の前には、何かあいさつの定型文を書き入れると更にしっかりした文章になります。
例えば「時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。」など、その時々の季節にマッチしたあいさつ文を加えてみましょう。
私儀の類義語
私儀の類義語としてよく紹介される言葉に私ことというものがあります。
ちなみに読み方は「わたくしこと」です。
こちらも「私のことについて恐縮ですが…」というへりくだった表現となり、「私儀」と同じシチュエーションで使用してかまいません。
使い方に関しても、上述の例文の「私儀」の部分を「私こと」に入れ替えて使うことができます。
言い換えても違和感のない言葉ですが、どちらかというと「私こと」の方が若干カジュアルな場面で使用する言葉というイメージがあります。
「私こと」と「私事」を混同しないように注意!
「私こと」と「私事(しじ・わたくしごと)」は全く別の言葉です。この2つを混同してしまっている方が多いので注意して下さい。
私事は有給休暇届けなどの場面で使用したりすることもありますが、主にプライベートな場面で使う言葉となります。
私事の意味は、国語辞典によると以下のように説明されています。
1.公的でない、自分だけに関係した個人的な事柄。しじ。「―で早退する」「―で恐縮ですが」
2.自分だけのこととして、秘密にしていること。内証事。隠し事。
まとめ
ビジネスで用いられる言葉を見てみると、自分のことについて語る際に謙譲語がしばしば出てきます。
日本語は謙譲の精神を重視していることから、この分野のボキャブラリーが豊富になったといえます。
自分を下げることで相手を引き立てる表現です。
私儀もその中の一つです。年配の方の中には、このような表現について結構うるさい人もいます。
ですから謙譲語の中でもビジネスシーンでしばしば使われる言葉はしっかりマスターしておきたいところです。