マナー・知識

就職活動の準備で最初にやることは企業研究

就職活動でやるべき企業研究

彼を知り己を知れば百戦殆からず(かれをしりおのれをしればひゃくせんあやうからず)

これは「孫子」に出てくる有名な一節です。「孫子」はナポレオンが座右の書にしたと言われており、2000年以上の時を超えて現代でも評価されている戦略本です。

歴史上の戦略の大家が唱える必勝の法則が「相手を知ること」と「自分を知ること」なのです。

就職活動に置き換えれば、「相手を知ること」は企業研究、「自分を知ること」は自己分析といえます。

ここでは、就職活動で成功するための企業研究について解説します。

仕事の未来を予想する

自分が希望する職種や会社が決まっている人は別として、将来が漠然としている人は、いったん視野を広げて社会を見渡してみましょう。

世の中の変化は激しくなっており、新しい職業が生まれたり、古い職業がなくなったりするスピードも加速しています。価値観の変化やテクノロジーの進化によって、職業が増えたり減ったりしているのです。

日本では少子化・高齢化で人手不足が問題となっていますが、AI(人工知能)が普及してきたために、今まで人間でなければできなかった仕事が減ってきています。

建設会社や運送会社、飲食店の店員、介護施設などでは労働力不足が深刻ですが、将来的にAIとロボット化が進めば人手不足は解消される可能性があります。

会計士などはエリートの職業とみられていますが、アメリカではIT化の進展で過去10年間で会計士が数万人規模で減っています。こうした波は日本にも押し寄せてくるでしょう。

今、人気がある職業だけに目を向けるのではなく、未来を予測して、十年後、二十年後も生き残っていけるような職業を選ぶことが重要になります。

以下は、参考までに米国における消滅可能性職業のトップ10です。

機械が奪う職業・仕事ランキング(米国)

  1. 小売店販売員
  2. 会計士
  3. 一般事務員
  4. セールスマン
  5. 一般秘書
  6. 飲食カウンター接客係
  7. 商店レジ打ち係や切符販売員
  8. 箱詰めや積み下ろしなどの作業員
  9. 帳簿係など金融取引記録保全員
  10. 大型トラック・ローリー車の運転手

<出典> はいぶりびと「2030年までに今ある仕事の半分は人工知能に奪われる」

企業研究の方法

就職活動に取り組む時には、企業研究を進めておくことで、会社側の採用ニーズや面接の対策法を知る手がかりにもなります。

就職活動の経験がない人の場合、情報を集めているうちに世の中には色々な企業が存在していることに気づくでしょう。

情報を集めている中で関心を引いた企業があれば、より深く掘り下げていくといいでしょう。

取り扱っている商品やサービス、業界のことなど情報を収集して深く知ると志望動機もはっきりしてきます。

ここで、企業研究に取り組むための方法をいくつかご紹介します。

新聞やビジネス雑誌

日本経済新聞などの新聞や、日経ビジネス、東洋経済、週刊ダイヤモンドなどのビジネス雑誌を読むと良いでしょう。

特にビジネス雑誌では、各号ごとに特集が組まれているため、業界や職業の特集を読むことで、自身の興味のある業界を見つけやすくなります。

また、興味がある業界の現状と将来に関する最新の情報をインプットすることができるでしょう。

また、SPAなどの雑誌で覆面座談会などの企画記事を読むことで、表に出ている綺麗な情報だけではない、裏事情を得ることができます。

就活サイト

一般に「就活サイト」と呼ばれるもので、リクナビやマイナビなどが有名ですね。

こうした就活サイトは就職活動をする学生向けのウェブサイトなので、仕事の内容の説明や、入社数年目の先輩社員へのインタビューなど、入社後のことがイメージしやすい内容になっています。

基本的にはこうした就活サイトから情報収集を始めて、興味をひく企業を多めにピックアップしていくことから始めてみると良いでしょう。

就職四季報

主に株式投資をする人のために出版されている「会社四季報」と、就職する際の会社研究などに役立つ「就職四季報」があります。

会社毎の個別の情報収集をしなければ、就職活動はどの仕事をしたいかというだけでは次の一歩は踏み出せません。

学生向けに魅力的に作られた就活サイトを見るだけでなく、客観的なデータを見てみると、その会社の将来性が見えてきます。

四季報などの企業データで見るべきポイントをいくつか例示します。

業績データ
【売上・利益】右肩上がりで伸びているか?、同業者と金額/成長率を比較してみる

経営指標
【売上高総利益率 / 営業利益率】その企業が生み出す付加価値を表しています。この値が高いほど付加価値の高い事業を行っており、働く人達も想像力を求められます(製造業やITサービスなどで高く、流通業や小売業などで低い傾向にあります)。反対にこの値が低いほど競争環境が激しく、価格競争に陥っていたりする可能性があります。
【自己資本比率】これは安全性の目安です。50%以上あると倒産確率は低いでしょう。

株主
社長やほかの取締役などの経営陣が大株主に出てくる会社だと成長力が高い可能性があります(会社の成長が自分の保有している株式の評価アップに直結するので)。一方でオーナー社長の権限が大きすぎてワンマン経営に陥いる危険性もあります。
親会社がある場合は、その影響力が大きいので、親会社についても調べる必要が出てきます。

企業のホームページ

会社のホームページも必ず見るようにしましょう。

チェックポイントの例は以下のようなものです。

デザインは新しいか、更新頻度は高いか?
パッと見た時に、昔ながらのデザインで情報の更新頻度も低いような会社は、経営者の年齢が高くてITリテラシーが低い、昔ながらの企業体質でスピード感がない可能性が高いでしょう。
それが一概に悪いということではなく、堅実経営であったり、市場シェアが高いために企業イメージを高めるのに力を入れなくても安定している企業である場合もあります。どんな企業で働きたいかによって良し悪しの評価は変わってきます。

経営者の顔写真があるか?他の役員の写真は出ているか?
社長挨拶などで経営者の顔写真が出ていない会社は注意が必要です。経営者の顔出しはいまの世の中では必須事項です。
また、社長以外の取締役陣の顔写真が出ていると良い会社である可能性が更に高くなります。ワンマン経営ではなく、経営陣がチームとして機能している会社である可能性が高いからです。

口コミサイト

Openworkなどの、働いている(いた)社員による会社の評価がみられるサイトに登録してみると良いでしょう。

実際にその会社で働いている(いた)社員による生の声は貴重でとても参考になります。

最後に

今まで社会人として働いたことがない学生にとって、企業のことを研究するといってもイメージが持ちにくく、難しいであろうことは否めません。

企業研究の方法についていくつか具体的に紹介しましたが、両親や親戚、先輩、その他の身近な社会人に話を聞いてみて、それをとっかかりにネットや書籍を使って調べてみる、そしてその結果をまた先輩にぶつけてみる、というのが最も効果的かもしれません。

冒頭でご紹介した、孫子の「彼を知り己を知れば百戦殆からず」という言葉は、就職活動においても、その後の社会人生活においても本当に大切なことです。

企業研究は単に就職活動の手段としてだけでなく、自分の見識を広げるのに大変役に立ちますので、全集中で取り組んでみてください。

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