ビジネスシーンにおいて、かしこまった場面で用いられるのが存じますという敬語表現です。これらは思う、知っているの謙譲語です。
ここでは、「存じます」の意味と使い方、言い換え可能な類語表現について解説します。また、同じ意味ながら使い方が少し異なる「存じ上げます」についても説明しています。
存じますの意味
冒頭にも記したように、存じますは「思う・知っている」の丁寧な言い方です。
謙譲語といって、自分をへりくだって相手を立てる時に用います。
主に目上の人に対して使いますが、「思う」と「知っている」の2つの意味で使われるということを覚えておきましょう。
ビジネスシーンではかなり使用頻度が高い敬語になります。
存じますの使い方
「存じます」は謙譲語ですので、使用する相手は自分より目上の人になります。
「誠にありがたく存じます」などと語尾につけたり、相手にお伺いを立てる際に「失礼とは存じますが」などと前置きとして使ったりするのが一般的な用法です。
ただし、目上の人に用いることができると言っても、やたらと語尾に「存じます」を添えると不自然かつ慇懃無礼な印象を与えてしまうこともあるので注意しましょう。
似たような表現に「存じ上げます」という敬語もありますが、微妙に異なる用法があります。
そこで、次章では「存じます」「存じ上げます」との違いについて説明します。
存じますと存じ上げますの違い
「存じます」と似た「存じ上げます」ですが、辞書的な意味では、こちらも「思う」「知る」の謙譲語であり特に大きな違いはありません。
しかし、実際に使用する際にはニュアンスの違いに注意が必要です。
「存じる」という謙譲語に加えて「上げる」という言葉が添えられているのは、相手を高くして自分をへりくだる意味を強めるためであり、となると、存じ上げる対象は自然と敬うべき人ということになります。
「存じ上げる」に関しては、思うという意味で使われることは少なく、誰かを知っているという意味で使われると考えてよいでしょう。
さらに、「存じ上げます」という言い方より、語尾を謙譲の表現に変えて「存じ上げております」とします。誰かのことを尋ねられた時などに「お名前だけは存じ上げております」などと使ったりすることが多くなります。
また、存じ「上げる」というぐらいですので、対象の相手を持ち上げて敬意を示すために使われる言葉のため、モノに対しては使いません。例えば、書類の内容について知っているかと問われた時には、「存じております」と言うのは正しいですが、「存じ上げております」というのは誤りです。
なお、「ご多忙とは存じ上げますが」など、「存じ上げます」を「思う」の意味で使用する例もあります。ただ、それに続く言葉が「お願い申し上げます」など語尾が同じく「上げます」となるような場合だと、「上げます」が重複して過剰な敬語表現に聞こえてしまう恐れもあります。
少なくとも話し言葉では「ご多忙とは存じますが」とした方が無難でしょう。
存じます の言い換え可能な表現
同僚など近しい関係の相手であれば、「存じます」より「知っています」や「思います」の方が自然です。
「思う」「知る」の代わりにすべてを「存じます」にすると、敬語が過剰になってかえって不自然に聞こえますから注意してください。
「お忙しいとは思いますが」という表現でも十分丁寧に聞こえます。
また、知っている(分かっている)ということを丁寧にした承知しておりますという表現もあります。
「承知する」とは、「知る」に「承(うけたまわ)る」という謙譲語を付けた表現ですので、さらに「おります」という謙譲語の語尾を付け「承知しております」とすると、かなり丁寧に聞こえるでしょう。
一つ注意したいのが、人に対して「ご承知ください」などとは言わないことです。たとえ「ご承知おきください」と丁寧な形にしても、「承知」という謙譲語は人に対して用いません。間違って使っただけでもかなり失礼に聞こえるので注意しましょう。
承知してほしいことを伝えるのであれば、「お含みおきください」などとするのが適切です。
まとめ
「存じます」は、「思います」と言いたい時にも「知っています」と言いたい時にも使える便利な謙譲語です。
とはいえ、敬語表現も過剰になれば、「慇懃無礼」という言葉もあるようにかえって失礼だと思われてしまうこともあります。
別の表現で言い換え可能な時はいろいろな表現を使い分けて、「存じます」一辺倒にならないように注意しましょう。
「存じ上げます」は少し違うニュアンスがあることに注意してください。